家族が食べたいものを考え、家族の予定を優先し、目の前のことを一つずつこなしていく。そんな毎日を長く続けるうちに、「私は何が好きだったのだろう」「本当は何をしたいのだろう」と、自分の気持ちが分からなくなってしまうことがあります。
「自分らしく生きよう」と言われても、何から始めたらよいのか分からない。そう感じるのは、自分に何もないからではなく、それだけ長い間、誰かを大切にしてきたからかもしれません。
20年間の専業主婦生活を経て、50歳で起業した、心と身体を満たす体質改善コーチのやすむらひろみさん。今回は、自分を後回しにしていた日々から、少しずつ自分の感覚を取り戻し、人生後半の新しい一歩を踏み出すまでのお話を伺いました。

こんなお悩みをお持ちの方へ
- 家族や周囲のことを優先し、自分のことはいつも最後になっている
- 「何がしたい?」と聞かれても、すぐに答えられない
- 外では笑えるのに、家ではついイライラしてしまう
- 頑張りたい気持ちはあるのに、身体が重く、思うように動けない
- 人生後半を自分らしく過ごしたいけれど、最初の一歩が分からない
家族を優先するうちに、「自分の好き」が分からなくなった
やすむらさんは、二人のお子さんを育てながら、20年間専業主婦として家族を支えてきました。
家族を大切にして過ごしてきた一方で、自分の希望を尋ねられることに、苦しさを感じることもあったといいます。
「自分のやりたいことをやりましょう、自分を生きましょうと言われても、私、何がやりたかったのか分からなかったんです」
好きな食べ物や、その日に食べたいものさえ、すぐには思い浮かびませんでした。「何でもいいよ」と答えても、実際に料理が目の前に出てくると「これではなかった」と感じる。けれど、何がよかったのかは、先に言葉にできない。家族の希望を考えることに慣れるうちに、自分の感覚が見えにくくなっていたのです。
同じように、「家族が喜ぶものなら選べるのに、自分のためとなると決められない」と感じる方もいるのではないでしょうか。
外では笑えるのに、家では笑えなかった
やすむらさんの言葉の中で、特に印象的だったのが、専業主婦時代の笑顔についてのお話です。
「外では笑えるんです。人がいるから。でも家に帰ると、機嫌が悪くなったり、不平不満が出てきたりしていました」
「私ばっかり大変」と感じ、家族の気遣いにも気づけなかった。家族に優しくしたいのにできない自分を見て、さらに苦しくなることもあったそうです。
やすむらさんは、家族を支える毎日の中で、自分の気持ちを長く後回しにしていたと振り返ります。
自分を後回しにしてきた時間を、失敗として否定する必要はありません。家族を支えてきた時間も、自分自身の大切な人生です。そのうえで、「これからは私の気持ちも聞いてみよう」と思えたとき、新しい選択が始まります。
身体に目を向けたことが、自分を見つめ直す入口に

やすむらさんが最初に目指したのは、カウンセラーでした。子育てがうまくいっていないと感じた経験から、考え方を見直すことで親子関係や自分の受け止め方が変わることを知り、同じように悩むお母さんを笑顔にしたいと考えたからです。
その後、コロナ禍で自分自身の身体や暮らしを見直す時間が生まれ、以前から関心のあったファスティングと出会いました。
やすむらさんにとって、身体に意識を向けることは、体重だけを見つめるものではありませんでした。食事や日々の過ごし方を見直し、瞑想を通して立ち止まる時間を持つことが、「今の私は何を感じているのか」を確かめるきっかけになったと話します。
ここで大切なのは、ファスティングをすれば誰もが同じように変わる、ということではありません。この記事でお伝えしているのは、身体に向き合う時間が、やすむらさん自身にとって心を見つめ直す入口になった、という個人の体験です。
やすむらさんは、その体験を重ねる中で、少しずつ人との関わり方や行動が変わり、自分にも自信を持てるようになったと振り返ります。
「思っているだけではなく、行動できるようになりました。出会う人も変わっていって、想像しなかった未来が今、という感じです」
やすむらさんにとって身体を整えることは、体重や見た目だけに向き合うものではなく、自分の声に気づく時間になりました。その実感が、現在の体質改善コーチとしての活動につながっています。
大きな夢でなくても、小さな「やってみたい」から

「やりたいことが分からない」とき、すぐに大きな夢や目標を見つけようとすると、かえって動けなくなることがあります。
やすむらさんは、「別に大きなことじゃなくてもいいんだよ」と話します。
今日食べたいものを自分に聞いてみる。いつもなら選ばない服を着てみる。会いたい人に会いに行く。少し気になっていた場所へ足を運んでみる。そんな小さな選択も、自分の感覚を大切にする一歩です。
最初から正しい答えが分からなくても構いません。選んでみて、「これは少し違った」と分かることも、自分を知る大切な経験になります。
家族を大切にすることと、自分を大切にすることは、どちらか一方を選ぶものではありません。家族を大切にしながら、自分の気持ちにも少しずつ目を向けていく。その歩みが、やすむらさんにとっての再スタートにつながっていきました。
人生後半は、ここからまた自分らしく
20年間の専業主婦生活を経て、50歳で起業したやすむらさん。人前で話すことが得意ではなかった時期を越え、現在は体質改善のサポートや講演活動にも取り組んでいます。
けれど、誰もが起業や大きな挑戦をする必要はありません。人生の再スタートは、これまでの人生を否定して、まったく別の自分になることでもありません。
「好き」が分からない自分を責めず、今日の自分が少し心地よいと感じるものを、一つ選んでみる。その小さな積み重ねによって、見える景色がゆっくり変わっていきます。
あなたが今日、自分のために一つ選ぶとしたら、何を選びたいですか。
答えがすぐに出なくても大丈夫です。その問いを自分に向けられたことが、もう「ここから」の始まりなのかもしれません。