こんにちは!ハピラボ通信です。
前回の「年末の整理整頓」の記事から、早いもので半年が過ぎました。
季節が二つほど進み、暮らしの景色も少しずつ変わりましたね。身の回りのものを整えて清々しくスタートしたはずの毎日。けれど、物理的なものが片付いても、心の中には「整理のつかないモヤモヤ」がふと芽生えることがあります。
特に、大切なわが子のこと。
「他の子と少し違うかも」「育てにくいのは私のせい?」
そんな風にして、夜中に一人で検索しては溜まっていく不安。今回は、ハピラボが大切にしている「自分らしく生きるための選択」という視点で、障害福祉の専門家・理英さんにお話を聞きました。
今回お話を聞いた理英さんは、介護・障がい福祉の現場でキャリアを積み、今年春から施設長に就任したばかり。認知症高齢者のケアから障がいのある方の就労支援まで、「人が人を支える」現場に26年立ち続けてきた方です。現場の経験を起点に、介護・福祉の教育者として「笑顔を広める」活動を続けてきた理英さんの言葉には、子育てに悩む親の心を軽くするヒントがたくさんありました。
この記事の目次
1.「みんな、得意不得意がある」という視点
最初に印象的だったのは、理英さんのこんな言葉でした。
『細かく見ていくと、誰にでも気になるところはあるんですよ。うちの代表もADHDっぽいところがあるって笑っていたし、私は物が揃っていないと落ち着かないので、少しこだわりが強いところがあるなと思っています。結局、人って誰しも何かしらの特性や得意不得意があるんですよね。』
笑いながらそう話す理英さん。でも、その言葉は決して軽いものではありません。障がいの有無にかかわらず、「足りないところは補い合う」という考え方が、理英さんの根っこにあります。理英さんはそれを「ヒューマンケア」と呼んでいました。
高齢者ケアでも、障がい福祉でも、子育てでも、本質は同じだといいます。大切なのは、できないところだけを見ることではなく、その人らしさをどう支えていくか。発達障害やグレーゾーンという言葉が広まる中で、つい「障がいか個性か」と二択で考えたくなりますが、理英さんの視点では、まず“その子をどう理解し、どう支えるか”が出発点でした。
2. 22歳のときに受けた問い
子育ての不安について聞いたとき、理英さんが静かに話してくれたエピソードがあります。
20歳で障がい者施設に働き始め、2年ほどたった頃。同い年の利用者さんのお母様から、こんな問いを受けたそうです。 「リエちゃん、これから結婚して、障がいのある子が生まれるとわかっていたら、産む?」
理英さんは、すぐにこう答えたといいます。
『私、即答で「産みますよ」って言ったんです。「産まない選択肢ってあるんですか?」って。 なぜそこまで言えたかというと、障がいがあってもみんな楽しそうに生きている姿を見てきたからなんです。助けてくれる人もたくさんいる。そう思えたから、大丈夫だと思えました。』
理英さんの身内にも障がいをもっている方がいることも、よりその想いのベースになっていると言います。
理英さんは「他力本願なんです」と笑いますが、その感覚こそが、子育ての不安を少し軽くしてくれるのかもしれません。一人で完璧に抱え込もうとするのではなく、周囲の力を借りること。それは弱さではなく、子どもを育てるうえでとても大切な力です。
3. 早めに知ることは、諦めではない
「障がいがあるかもしれない」と言われたとき、多くのお母さんが感じるのは、わが子に何か“ラベル”を貼られてしまうような感覚かもしれません。特別支援学級という言葉にも、どこか悲しいイメージを持つ方がいるでしょう。
でも理英さんは、25年前に友人の子どもに自閉症の傾向を感じ、悩んだ末に友人に伝えた経験を話してくれました。
『その子には高い力がありました。得意なところはもっと伸ばせたし、苦手なところはこうやって補えばいいと早い段階でわかったんです。特別支援学級は、その子のペースで学び成長するための場。決してダメな子だから行く場所ではありません。親がそう受け止められると、子どもも安心して伸びていけると思います。』
早めに気づくことは、可能性を狭めることではありません。その子の得意を伸ばし、苦手を支えるための環境を早く整えることにつながります。診断や支援は、子どもを決めつけるためのものではなく、よりよく育つための手がかりになることがあります。
4. 発達障害やグレーゾーンと言われたとき、親ができること
理英さんの「ヒューマンケア」の視点で考えると、大切なのは診断名そのものよりも、「この子が安心して成長できる環境はどこか」を考えることだといいます。
もちろん、どの環境が合うかは子どもによって違います。通常の学級、通級、特別支援学級など、選択肢はいくつかあります。どこが正解かを一つに決めるのではなく、その子の様子や困りごとに合わせて、少しずつ考えていくことが大切です。
「一般学級が合わないなら特別支援学級」と単純に分けるのではなく、まずはその子がどんな場面で困りやすいのか、どんな支えがあると落ち着けるのかを見ていく。そうした視点があるだけで、親の不安は少しずつ整理されていきます。
発達障害やグレーゾーンという言葉が広まり、2〜3歳ごろの健診や園生活の中で、「ちょっと気になる」と相談につながることもあります。ですが、早く気づくことは悪いことではありません。むしろ、子どもの発達を見守りながら、必要な支援につなげる大切なきっかけになります。
5. 今日休んでも、明日一緒に頑張ろう
理英さんは、お仕事中に利用者さんから、「自分は障がいがあるからできない。やりたくない。」と言われたとき、理英さんが利用者さんによく伝える言葉があります。
それは、『今日やりたくなかったら休んでいいよ。でも、明日は一緒に頑張ろう。それって障がいがあってもなくても、誰にでもある気持ちだから。』ということです。
学校に行きたくない日も、仕事がつらい日も、子育てに自信をなくす日もあります。そんなとき、「ちゃんとしなきゃ」と自分を追い詰めるより、今日は少し休んで、また明日向き合えばいい。理英さんの言葉には、そんなやさしさがあります。
発達障害という言葉に過剰になるのではなく、まずはその子の「今日」に寄り添うこと。完璧な答えを探すのではなく、目の前の子どもと一緒に少しずつ進んでいくこと。それが、理英さんの26年という現場に向き合い続けた経験がたどり着いたシンプルな答えでした。
発達障害やグレーゾーンという言葉に出会うと、親はどうしても不安になります。けれど大切なのは、診断名だけで子どもを見つめることではなく、その子が安心して育つためにどんな支えがあるとよいかを考えることです。理英さんの言葉は、「困りごとがあっても大丈夫」と背中を押してくれる、やさしい道しるべでした。
次回のハピラボ通信もお楽しみに!ではでは。

【この記事の監修者】
一般社団法人 一粒福祉会
施設長
岡崎理英

